今回のテーマは、初心者サイクリストの憧れであり、ビッグチャレンジである100kmロングライドです。
失敗せずに楽しく走り切るためのノウハウを、自転車ジャーナリストのハシケンがアドバイスします。

カスイチ100kmチャレンジのノウハウ
100kmという距離のロングライドをしっかり走り切るためには、事前の準備と当日の賢い走り方について知っておくことが大切。今回は、最後まで楽しく100kmを走るための4つのポイントを紹介します。
前編では、走りやすく達成感も得られるルートの作り方。そして、ライドに携帯するオススメの装備品。
後編では、当日の走り方と食べ物の補給方法についてレクチャーします。

今回は、人気のサイクリングスポットとして知られる茨城県の霞ヶ浦エリアで実際に100kmロングライドにチャレンジ!
つくば霞ヶ浦りんりんロードは、霞ヶ浦と筑波山を中心に敷かれた大規模サイクリングルート。道路はサイクリストに向けて整備され、周辺にはおすすめの休憩スポットも多いため、ロングライドには最適な環境です。
特に霞ヶ浦を1周するルートは約100kmあり、はじめて100kmに挑戦する人にはシンプルでわかりやすいためオススメです。
それではさっそく、霞ヶ浦一周、通称カスイチを実走レポートしながら100km挑戦のためのノウハウを紹介していきたいと思います。

つくば霞ヶ浦りんりんロードは主に霞ヶ浦方面と筑波山方面に分けられ、霞ヶ浦は100kmチャレンジにもってこいの環境。筑波山方面はサイクリングだけでなくヒルクライムに挑戦することも可能。春にはお花見サイクリングが楽しめる。
走りやすく達成感を得やすいルートの作り方
まず、事前のルート決めは、100km挑戦の成功を大きく左右する大事なポイントです。初心者でも無理なく走ることができて、かつ達成感を得やすいルートを設定しましょう。
今回チャレンジするカスイチのルートは、湖畔沿いのルートで信号がほぼ無く平坦なのでライドに無理が無く、かつ湖をぐるっと一周するという達成感が得られるので、初めての100kmに最適でしょう。距離に不安のある方は、いつでも引き返しが可能で距離の調整がしやすい往復ルートがおすすめです。

コース付近にはこうした看板が設置されている
初心者にとって100kmロングライドは、一大イベント。
行き当たりばったりで挑戦するのではなく、事前にルートや立ち寄りスポット、時間配分を決めるところからイベントは始まっています。今回、ルート作成アプリの「Ride with GPS」を使用して100kmルートを作りました。サイクリング道路を優先してルートを引いてくれて、直感的に操作ができます。まだ使ったことがない人は、アプリのダウンロードをオススメします。
霞ヶ浦を反時計回りに1周
初めて100kmのルートを作るときのポイントは、起伏が少ないフラットな道を選ぶことです。究極を言ってしまえば、スタート地点を標高の高い地点に設定して、下り基調のルートを設定するという方法もあります(スタートとゴールが異なるワンウェイルートの場合)。
また、湖のような場所を走る場合は、反時計回りに走ることがポイント! 車両は左側通行なので、湖畔に近い側を走り続けられるメリットがあります。さらに、交差点でも二段階右折が発生せず、シンプルに左折のみでスムーズです。
こうして実際に設定したルートがこちら。土浦市内にある「りんりんポート土浦」を拠点にして、霞ヶ浦を反時計回りに一周した100kmです。霞ヶ浦でもっともベーシックなロングライドルートです。距離は約95kmでわずかに100kmに届かないため、全体を通して5km弱の寄り道をしてジャスト100kmをめざします。
りんりんポート土浦からスタート
カスイチ(霞ヶ浦一周)起点になる土浦市は、電車でもクルマでもアクセスしやすい点が魅力です。電車なら駅自体が先進的なサイクリングターミナルになっている土浦駅の「りんりんスクエア土浦」を起点にしましょう。一方で、クルマなら、カスイチのルート(つくば霞ヶ浦りんりんロード)上にある無料駐車場を完備するターミナル「りんりんポート土浦」がオススメです。今回は、クルマを「りんりんポート土浦」に停めて出発しました!





スタートして5kmほど走ると、大きな風車がシンボルの湖畔沿いの広大な公園「土浦綜合運動公園」が見えてくる。ここは温泉施設「土浦市国民宿舎水郷霞浦の湯」が公園に隣接しているため、ライドの後に汗を流すことも可能なため、ここを起点にするサイクリストも多い。
霞ヶ浦湖畔にたたずむ「霞浦の湯」。浴場からは霞ヶ浦湖畔が一望できる。

りんりんロード沿いに建つ予科練平和記念公園は、戦争と平和を考えさせる場所

「日本を代表し世界に誇りうるサイクリングルート」としてナショナルサイクルルートに認定されたコースということもあり、路面には道案内の矢羽根が示され、道に迷わずに安心して走ることができる。
パンク修理に対応できるだけのアイテム
ロングライドではトラブル時に対応できるだけのアイテムの準備とタイヤの空気圧のチューニングを行いましょう。パンクは滅多に起きませんが可能性はゼロではないので、万が一に備えてパンク修理ができるアイテムは必携です。次のアイテムを用意しましょう。
① CO2ボンベとインフレーター
② 交換用インナーチューブ
③ タイヤレバー
④ 携帯工具
交換用インナーチューブはできれば2本持っておくと安心です。50km程度のロングライドであれば1本でも問題ないですが、100kmになるとその分パンクのリスクも倍です。仮に1回パンクしたとしてももう1回のパンクにも対応できるように2本持っておきましょう。CO2ボンベ(カートリッジ)も同様です。ちなみに、小型の携帯ポンプは一般的ですが、高速充填できるCO2インフレーターは労力をかけない時短アイテムとしておすすめです。


このほか、立ち寄りスポットなどで買い物をするとき用の小銭も用意しておきましょう。
また、真冬でスマホやサイクルコンピューターの電力消費が激しい環境下ではモバイルバッテリーもあると安心。スマホを含めて、これらを使い切りのジップロックに入れて、ジャージポケットにスマートに収納します。
ライトなどは前日にフル充電しておくこと
このほか、盗難防止用のワイヤーロックもお忘れなく! 休憩スポットで駐輪するときに欠かせません。また、道路交通法で定められている前後ライトの装備ですが、充電を忘れて点灯しないということがないように、きちんとフル充電しておきましょう。


100kmロングライドでは空気圧のチューニングは必須

空気圧は高く入れすぎず、やや低めに調整してあげると乗り心地がよくなりロングライドが快適になります。短い距離のロングライドなら空気圧を気にせず走り切れても、100kmにもなると、時間にして4〜8時間ほどサドルの上に乗っていることになります。路面からの微振動がロングライド後半に身体にじわじわとダメージを与えます。そのため、100kmロングライドでは、スタート前にきちんと乗り心地のよい空気圧にチューニングしてあげましょう。
まずはタイヤに記載がある指定空気圧の下限あたりで一度調整して感触を確かめてみましょう。指定空気圧が6〜8であれば6気圧で乗るということです。路面からのコツコツとした突き上げ感を解消でき身体が疲れにくくなります。

今回のコースは霞ヶ浦を反時計回りに走るので、常に左手に湖を見ながらのライドが続きます。
つくば霞ヶ浦りんりんロードの路面状況は抜群。矢羽根をはじめとするわかりやすいルートは初心者でも安心・安全! この日は冬特有の北風も弱く、気象コンディションとしては良好。序盤は太陽も覗かせ青々した湖面を楽しみながら順調に走り続けます。後編では、エネルギー切れを起こさないための補給食のタイミングや後半にバテない走り方についてレクチャーします。
お楽しみに!