「ヒルクライムの聖地」乗鞍岳

標高3026mある乗鞍岳はサイクリストたちに、「ヒルクライムの聖地」と呼ばれている。長野側からは「乗鞍エコーライン」、岐阜側からは「乗鞍スカイライン」。日本が誇る山岳道路が、それぞれ県境の標高2716mまで続き、どちらのルートも距離20km前後のロングヒルクライムコース。
終盤の森林限界を超えた先に広がる壮大なロケーションは、乗鞍ヒルクライムのハイライトだ。
中部山岳国立公園に指定される乗鞍エリアは自然環境保護のため一般車両の通行が禁止されるマイカー規制が実施。そのため、サイクリストたちは麓の乗鞍高原(長野)や平湯温泉(岐阜)にマイカーでアクセスして、そこから自転車に乗り換えて山岳サイクリングを楽しんでいる。
さて、今回紹介するルートは岐阜側から登る「乗鞍スカイライン」だ。
※路面崩落のため2022年9月から全面通行止めとなっていたが、2024年8月20日に片側通行で開通予定
乗鞍スカイラインの起点は?

平湯温泉からスタート
乗鞍スカイラインを自転車で楽しむときは、平湯温泉を拠点にするのがオススメだ。一般観光客はバスターミナルからバスに乗車して乗鞍スカイラインへ向かうが、我々サイクリストはサドルにまたがって乗鞍スカイラインのスタート地点へ走り出す。
とはいえ、バスターミナルから乗鞍スカイラインの上り口までのアクセスも本格的な上り坂。ここで体力を消耗しないよう注意が必要だ。

乗鞍スカイラインまでのアプローチもなかなかハード
国道158号を少し上ると、平湯トンネル手前の側道(県道5号線)へ。ここからおよそ3kmの登坂が始まる。勾配もかなりきつめなのでウォーミングアップにしては少しハード。そして、連続するコーナーをいくつか抜けた先に平湯峠の石碑が飛び込んでくる。ここが乗鞍スカイラインの入り口。

平湯峠のピークが乗鞍スカイラインの入り口だ
平湯峠の地点で標高1684mあり、ここから距離14kmの乗鞍スカイラインへ入り、標高2716mの乗鞍畳平を目指す。

平湯ゲートではサイクリストの利用状況調査のアンケートが行われていることがある
乗鞍スカイラインと彫られた立派な標木を横目に、マイペースで登り出す。しばらくは山肌に沿った山岳道路が続き、抜けの良いロケーションというよりは、どこか神秘的な山深さが印象的なコースだ。
ルート全長は距離14.1km、平均勾配7.1%と、この距離を走って7%を超える平均勾配は、なかなかハード。しかも、平湯ゲートから序盤の5kmは平均勾配8%を超えているので序盤はペースをあげようとせず、足の温存を心がけよう。

下界に目を向ければ登ってきた道を見下ろすことができる

遠くには平湯の温泉街も望める
補給食やドリンクの準備は万全に!
乗鞍スカイラインにチャレンジする際は小腹を満たす携帯補給食や水分補給のためのドリンクは必ず準備しておくこと。また、機材トラブルにも対応できるようにしておこう。なぜなら、乗鞍スカラインにはゴール地点まで行かなければ飲食ができる休憩施設がないからだ。

唯一、トイレがある「夫婦松展望駐車場」は平湯ゲートから3km弱の序盤の地点にある
夫婦松展望駐車場を過ぎた後は坂の勾配がやや緩くなり、快調にヒルクライムを楽しめる区間が続く。そして、ラスト5kmは乗鞍スカイラインのハイライト!
標高はすでに2400mに達して森林限界を超え、山容がクッキリと映える小低木のみが繁茂する世界だ。

まるで大蛇のような曲がりくねった九十九折り
この雲上のラスト5km区間は、間違いなく日本を代表する山岳サイクリングルートだろう。
ツール・ド・フランスの舞台となるようなヨーロッパアルプスにも似た山容と、そこを張り巡らされた山岳道路。標高2500mをすぎて酸素濃度も低く、頑張りすぎると息苦しさも感じてしまう世界。それもまた乗鞍スカイラインならではの魅力かもしれない。

ダイナミックで雄大な九十九折りの乗鞍スカイライン
標高が高く天候が崩れると荒天しやすいため、天気が安定した日の午前中の時間帯を選んでチャレンジしよう。

乗鞍畳平まで残り3.3km地点からの絶景ポイント

ゴールまで残り1km地点の稜線上を走る乗鞍スカイライン
左手には槍ヶ岳や穂高連峰を望むことができる

乗鞍畳平は長野県松本市側の乗鞍エコーラインと平湯側の乗鞍スカイラインの合流地点

畳平には軽食などを食べられるレストハウスもある

サイクルラックも常設
乗鞍スカイラインの開通期間は10月31日まで。それ以降は冬季閉鎖になり翌年の夏まで自転車での走行はできない。
双方向から登れる「乗鞍ライチョウルート」
2021年、乗鞍はその魅力を発信すべく、乗鞍スカイラインと乗鞍エコーラインを通貫する「乗鞍ライチョウルート」(雷鳥は乗鞍に多く生息する絶滅危惧種指定の鳥)という名称を誕生させ、麓の乗鞍高原温泉(長野県松本市)、平湯温泉側(岐阜県高山市)では双方向からの楽しみを発信している。サイクリストにとって松本側の乗鞍エコーラインは、乗鞍ヒルクライムレースが開催されることでも有名。是非、両方向からの絶景ヒルクライムにチャレンジしてみよう。
安全にルールを守って楽しもう
マイカー規制された乗鞍スカイラインと乗鞍エコーラインは自家用車の通行が禁止され、公共交通のバスやタクシーしか通行していない。そのためサイクリストにとっては走りやすい環境であることは間違いないが、下りを飛ばしたり、対向車線をはみ出しての走行は論外。また、九十九折のコーナー箇所では大型観光バスはフロントが対向車線にはみ出して曲がることになる。コーナーでバスとすれ違いそうになったらサイクリスト側がコーナーの手前で停車してバスの走行を優先しよう。

バスの走行を優先させよう

マナーを守って楽しいヒルクライムを