国内屈指のヒルクライムコースとして知られる乗鞍。8月末には、アマチュアヒルクライマーの頂点を決める「マウンテンサイクリングin乗鞍」が開催されます。毎年レースに参加し、乗鞍を知り尽くしたハシケンが乗鞍エコーラインの魅力と攻略法を紹介します。
伝統のアマチュアヒルクライマーナンバーワンを決める舞台
サイクリストなら一度は走りたい天空ロード。ヒルクライマーなら何度走っても飽きない聖地。雲を抜けた先に広がる雄大なつづら折りの坂道を駆け上がった先は、日本の自動車道路最高地点です。長野と岐阜にまたがる乗鞍岳には日本屈指のヒルクライムコースがあります。


標高3026mを剣ヶ峰とする乗鞍岳を駆け上がる乗鞍エコーライン(長野県道84号線)では、毎年8月の最後に人気のヒルクライムレース「乗鞍ヒルクライム」が開催されています。
長野県の松本市の西に位置する乗鞍高原をスタートして、20.5km先の標高2716mまで駆け上がります。大会は1986年に初めて開催され、国内ヒルクライムレースの草分け的存在です。長い歴史を持ち、森林限界を超えた厳しくも美しい高原の絶景ルートを舞台にする大会は、国内のヒルクライマーたちの憧れ。参加者それぞれの目標を胸に全国から集結します。この大会を制することは、アマチュアヒルクライマーのナンバーワンの称号を手にする価値があり、頂点を決めるチャンピオンクラスは毎年熾烈なレースが展開されています。

ここでは、本番まであとわずかに迫った乗鞍ヒルクライムへ出場する人たちはもちろん、天空の絶景を楽しみたい皆さんに乗鞍のコースの魅力と攻略法を紹介します。
コースを特徴別に3つに分けて紹介
スタート地点は乗鞍高原の観光センター前です。駐車場や飲食店、トイレがあり乗鞍ライドの拠点になります。すでに標高は1460mもあり、標高2716mのゴール地点までは全長20.5km, 標高差1260mです。ここでは、コースの乗鞍エコーラインを大きく3つのパートに分けて紹介します。

緩やかな勾配が続く第1区間
観光センター前をスタートしてから7km先の三本滝レストハウス前までが第1区間。中盤以降に比べて緩やかな勾配が続きます。2kmすぎの国民休暇村ホテル前をすぎると、木々が生い茂る森の中へ。所々、スピードを乗せられる平坦な区間もありペースを上げたくなりますが、そこは我慢。中盤以降を考えると、序盤の7kmは抑えめくらいのペースで淡々と走ることがポイントです。軽いギヤまでしっかり活用してトルクをかけすぎないようにしましょう。また、同じようなコーナーが連続するのでメンタルで負けないようにしたいです。


勾配の変化が大きな中盤の第2区間
6.5km地点、広い駐車場のある三本滝レストハウスをすぎると、スキー場の斜面をクロスするように高度を上げていきます。しばらく勾配の変化が大きくペースコントロールが難しいですが、タイトなコーナーでは勾配が急なイン側を走りすぎないようにしましょう(レース以外では交通法を守り、対向車に注意)。この第2区間は14.5km地点の位ヶ原山荘までです。


低酸素のなかに広がる絶景の第3区間
そして、第3区間が森林限界の中を走りゴールを目指すラスト5kmです。標高は2000mを超えて、酸素の薄さやパワーの出にくさを実感するでしょう。いっぽうで、解放的な息を飲む絶景が広がるのもこの区間。まさに乗鞍ヒルクライムのハイライトシーンです。ラスト2kmは雄大な乗鞍岳の稜線を伝いながら日本の自動車道路最高地点をめざしましょう!



コース中に2つの大きな難所がある
コース全体の勾配は6.15%で、ヒルクライムレースとしては標準的な勾配です。ただしコースの中で2箇所ほど急勾配区間があり、ここをスムーズにクリアすることがポイントです。1箇所目が11kmすぎから約1km続く急勾配のつづら折り区間。2箇所目が14,5km地点の位ヶ原山荘を通過したあと、ラスト3kmの森林限界に抜けるまでの1km弱の区間。ともに平均勾配9~10%近くある難所になっています。ここを力強く克服できれば大きくタイムを伸ばすことができるでしょう。

<コースプロフィール>
- 全長20.5km(Stravaデータ20.1km)
- 平均勾配6.15%(最大15%)
- 標高差1256m
- スタート地点標高1460m
- ゴール地点標高2716m